「劇場版コード・ブルー 」ヘリ屋さん視点の感想と是非知ってほしいこと
今年待望の映画「劇場版コード・ブルー −ドクターヘリ救急救命−」を観てきました。
ヘリコプターに関する仕事をしている私なので、独自の視点からの感想をお届けしようと思います。 映画本編の感動ストーリーに関する感想はありませんので予めご了承ください。
一部、ネタバレがありますので注意!
ついにブルーレイ発売開始になりました!!
ヘリ見学はドクターヘリを正しく理解してもらう良い機会
冒頭、ドクターヘリ見学に来ている小学生を案内しているところから始まります。ベテランになった藤川先生がドクターヘリの目的を熱く語ってくれています。
皆さんはご存知でしょうか? 改めて、ドクターヘリの目的とは、
- 患者さんの元にいち早くドクターを届ける
- 治療を行った患者さんをいち早くより良い治療ができる病院に連れて行く
昔ドクターとお話しした時に言われたのが、「早く行けるツールがあればヘリでなくても自転車、セグウェイ、ドローンなんでも良い。」 とおっしゃっていました。 私もそう思います。 正直、ヘリコプターって速度が早くドクターヘリというツールは非常に優秀なんですが、いかんせん大袈裟になります。その理由は、
- 着陸には消防隊の支援が必須
- 離着陸の時の騒音と風は有害でもある。
- 運航するには非常にお金がかかる
ヘリコプターって便利そうにみえて実は、不便な乗り物です。今日、日本全国で活躍できているのは、協力していただいている消防のおかげですし、その活動に理解していただけている皆さんのおかげです。 本当にありがとうございます。
ドクターヘリ自身に興味があるというかたは是非こちらの本を読んでみてください。
さて、そんなドクターヘリですが、今回主に成田空港と東京湾海ほたるで活躍しています。
成田空港での事案
「とあるエアラインの航空機が乱気流に巻き込まれた。その乱気流により機体が大きく揺れて複数傷病者事案」 といった内容でした。
- ドクターヘリは成田空港へ飛び立ち、管制官の指示に従い着陸します。後ろにはJAL機。ドクターが走っていくのは、ANA CARGOなどのすぐ横を走っていき事故機のすぐ近くに着陸していました。
管制官が気を利かせてくれて事故機のすぐ近くに着陸できるようにしてくれたみたいです。
実は、この映画の世界の空港管制官は非常に柔軟な対応をしており、素晴らしいと思いました。 私は実際に成田空港でのドクヘリ運用に携わったことがないので詳しくは知らないのであくまで推測でいいますと、いくらドクターヘリといっても事故機のすぐ近くにあえて着陸させてくれることはないでしょう。
それが今回は事故現場のすぐ近くに着陸指示しております。
実は、空港にはいろんな規則があって、いくら事故だろうとその規則を守ることが絶対です。 そうしないと他の航空機の迷惑にもなり、最悪の場合2次災害になる可能性があるからです。 そう考えると、今回の対応は異例とも言える事案です。
では、危険な行為なのかというと、ドクターヘリに使われているヘリコプターは20m四方のエリアがあれば安全に着陸することができるので、エアライン機の横に着陸するのは技術的に容易でしょう。 実際にやるかどうかは別として、エンジン後方のスペースに着陸することも可能です。
実際には空港だからもっとスペースあるから、わざわざこんなところには降りないでしょうが・・・「こんだけスペースあれば降りれるんだ」と思ってもらえればというイメージです。 *今回の撮影は成田空港全面バックアップだったみたいです。
ドクターヘリの運航は実は多くの管制官の方の協力があるってことも是非知っておいてください。 また、エアラインの皆様も暖かく見守ってくれています。
東京湾 海ほたる
海ほたる事案では、濃霧の影響でフェリーが海ほたるに直撃します。その事故現場へドクターヘリ出動。 *濃霧の影響でフェリーが事故したのに、ヘリコプターは飛べるという珍しい気象状態。
「ヘリ飛べますか?」というドクターの質問に「天気回復しております。ヘリ飛べます」とCSが回答しています。 たぶん実際にこのような状況であれば、ヘリは飛べるけど気象状態は決して良い方ではないことでしょう。今回の事案を考えてみると、
- 現場が海ほたるという海上であり
- 病院から現場までの飛行ルートがほぼ海の上であること
- というイメージができるので、飛行ルート自体は安全確保できている という認識だと思います。
さて、ここで気になるのは「海ほたるにドクターヘリは着陸することができるのか」ということですが、実はこの問題 公開前のイベントで実際のドクターヘリが海ほたるに着陸していることから可能ということがわかっています。
実際に降りたのは北西側の空き地でしょうか。十分すぎるスペースがありますね。実際にランデブーポイント(ドクターヘリ着陸候補地)になっててもおかしくないと思います。
ただ映画で気になるシーンが・・・「今まで見たことのないヘリコプター」の登場
見た瞬間「あれ?目の錯覚だったのか?」と思ってしまったぐらいです。 そのヘリコプターとは、ボディーがMD902 テールがEC135という ミックスヘリコプターでした。しっかり合成されていてあまり違和感がありませんでした。 さて、元の機体は、一体どこの機体だったんだろうか。めちゃくちゃ気になります。 千葉のドクターヘリってどちらもMD902 なんですよね。
登場のするは本当の一瞬なので見逃さないでくださいね!
もう1機活躍するヘリコプター 海上保安庁 EC225 スーパーピューマ
劇場版で唯一ドクターヘリではない機体が登場します。それが海上保安庁のEC225(AS332かもしれませんが・・・)
日本を飛んでいるヘリコプターでは一番大型で主に海上保安庁に多く配備されています。大きいってことで一気に多くの人を運べますし、救難事案時のレスキュー作業が得意分野ですね。 今回は海上保安庁の協力もあったみたいなので、おそらく実機を用いて撮影したんだと思います。 途中、救助に海上保安官が対応していますが、動きが機敏なところを考えると本当の隊員だったのでしょうか。
ドクターヘリだけではなく、海上保安庁のヘリも活躍している映画でした。
皆さんに知ってほしいこと
コード・ブルー はドラマからはじまり映画化されました。 これでさらに多くの方に「ドクターヘリ」を知っていただくことができます。 本当に喜ばしいことです。
私自身、ドクターヘリに携わっているからこそ思いますが、本当にドラマ、映画の影響は大きいと感じています。 このドラマが始まる前って「ドクターヘリってなに?」っていう人がほとんどでした。
それもそのはずです。コード・ブルーが始まった2007年は全国に14機しかありませんでした。そのドクターヘリは現在、全国42道府県に52機配備されています。 すっかり有名になった今では、「山Pの!!」とか、「ガッキーのやつやんね」と声をかけてもらえます。
生のドクターヘリを見た事があるって人も増えてきたと思います。また、これからその現場に偶然出くわす人もいると思います。その時に私からのお願いが3つあります。
- ヘリコプターが離着陸するときや羽が回っている間は絶対に近づかないでください。 申し訳ないですが、活動中はヘリに近づけないと思っててください。
- 写真や動画を撮る時は、救急車がヘリコプターの近くにいないときにしてください。 救急活動の妨げになる可能性があります。
- 消防や警察、ドクターヘリ関係者に指示された場合には従ってください。
ドクターヘリがいるところ、必ず患者さんがいます。 ドラマ、映画だけの世界ではありません。 リアルにそこにあるのです。
おそらく初めて実際に見た時は「あ、ドクターヘリだ!」って一目見たくて近づきたくなると思います。 気持ちはものすごくわかります。 逆の立場だったらそう思いますし行動しますから。 ただその気持ちをぐっと抑えて、少し遠くから暖かくその活動を見守っていただければと思います。
もし、生のドクターヘリを見たいって方がいらっしゃいましたら、ドクターヘリが配備されている基地病院で見学会を行っているところもあるので是非いらしてください。 藤川先生みたいな面白い先生が案内してくれるかもしれませんので。
最後は映画の感想ではなく、ドクターヘリ活動に関するお願いになってしまいました。
映画本編は感動いっぱいで泣きつかれました。 そして、改めて過去のシリーズを見直したいと思った作品になりました。
一気に振り返るならブルーレイボックスがおすすめ